現在、格闘技イベントRIZINを主戦場に活躍している総合格闘家の渡辺華奈選手を迎えたトークセッション。実は華奈選手が柔道の現役時代よりトレーニング指導を行っている間柄。前十字靭帯断裂や肩痛に悩まされ、大会での上位進出が出来なくなっていた頃。かつては強化選手にも選ばれオリンピック出場を目標にしていた時もあったのに、まるで結果を出せない自分に苛立ちと焦りを抱えての来訪だった。私は女子柔道実業団の強豪、コマツ女子柔道部をトレーニング指導していた経歴もあり、そのあたりも鑑みての指導依頼だったのだろう。基本的な体力は問題なく、むしろレベルが高い方。怪我の既往はあるものの、それがパフォーマンスに影響している感じでもなかった。問題はそれなりに選手として完成してしまっていたこと。そして、その自分に拘っていたこと。「得意技」「決め技」「自分の柔道」に固執してしまった。所属企業からの引退勧告→コーチ就任を一旦は受け入れたものの、「不完全燃焼」のままアスリート人生を終えることを拒み、総合格闘技へ進出。そして、フィールドを変えた華奈選手の「得意技」「決め技」「自分の柔道」は十分通用した。なれない打撃戦も身体能力でカバー出来た。良いコーチにも出会い結果が伴った。オリンピック出場や、世界の頂点を目指していた「あの頃」のように充実した日々が戻っている。華奈選手のアスリート人生の中ではほんの一部だが、時間を共にできたことをトレーナーとして非常に嬉しく思う。
(F&P向上委員会発起人 樋口彰美)